企業サイトの運用を激変させるマーケティングオートメーションツールの衝撃体験

 展示会で獲得した名刺や企業リストへのテレマへの反応率と比べると、Webサイトからの問い合せへのフォローや、アクセス解析結果から訪問企業にアプローチした方が結果が出やすいという判断する経営者、事業責任者は少なくなりません。自社の商材についてゼロから説明するような、営業コストを負担する従来型のマーケティングと、顧客の方で事前に(他社も含めて)比較し、検討した上で問い合せをしてきてくれるインバウンド型のマーケティングでは、その生産性の違いを考えれば、経営者/事業責任者が、インバウンドマーケティングを今後取り組むべき優先課題と捉えているのは当然の流れだという気がします。「出遅れが致命的な結果にならないために――ますます重要になるコンテンツマーケティング」で簡単に紹介しましたが、現在は、営業を人海戦術に頼る時代ではありません。コンテンツがお客を生み出すインバウンドマーケティングは生産性が高く、これから進むであろう人口減少時代への対策という観点も含め、この手法を自社ナレッジとして確立することは、経営課題として重要なテーマと言えるかもしれません。

 しかし、これは「アウトバウンドマーケティングは不要」という話ではありません。欧米企業と比較して、利益率や労働生産性の低さが指摘される日本のビジネス環境だからこそ、単なる売り上げの数字ではなく、高利益率を目指すべきで、なおかつ変化するビジネス環境に柔軟に対応していくには、IT技術を活用したテクノロジーマーケティングへの取組みは、まさに死活問題なのだと思います。

 このような状況において、経営者やマーケティング担当者に求められるのは、骨格となるコミュニケーションのメッセージを考え抜くことです。そして最新のテクノロジーや手法などは常に変化するものとして、時代、時代の作法に従いながら、メッセージをコンテンツに乗せる工夫を続けることが重要です。

BtoBマーケティングで一貫したメッセージで活動を続けることが難しいのはなぜか?

 前項で、「メッセージを考え抜くことが大切」と書きましたが、BtoBマーケティングは担当者の入れ替わりや複数の部署をまたぐなどの要因から一貫したメッセージで活動を続けることが難しいとされています。

 組織の仕組みとしての難しさもあるのですが、One to Oneといった概念であったり、関係性がマーケティングの重要テーマになっている時代にはパーソナルな目線や感覚も大事なのではないでしょうか。

 後の話につながりますので、唐突ながら、著者の経歴を簡単に紹介させていただきます。バンドでのデビューという夢を叶えることはできませんでしたが、20代は運よくギタリストとしてライブやレコーディング活動を生業とすることができました。その後、Macでの打ち込みやハードディスクレコーディングが本格化して来た時期にホームページ制作が仕事になることを知り、現在の会社を設立しました。もともと音楽/映像に関わる仕事だっただけに、誰もがスマホ、タブレットで動画を見る時代が到来したことで、最近は動画の企画/制作/プロデュースの仕事が大幅に増えています。そして最近はマーケティングオートメーションツールの導入や運用支援などにも業務の幅を拡げつつあります。

 こんな感じで、時代と共に変化に対応しながら、ビジネス規模としては小さいですが、多くの会社組織が設立から10年以内で消えてしまうなかで、個人のフリーランスで15年、会社にしてから15年の約30年、顧客と関係を構築し、その関係を継続してきました。その上で言えることは、この30年、自身の骨格となる"コミュニケーションのメッセージ"はなんら変化していないということです。

 企業の場合、BtoBマーケティングで一貫したメッセージを発信し続けることは難しいと書きましたが、わたしのような仕事をしている人達は、おそらく、メッセージについての一貫性は確保されているように思います。

 私自身の体験をもう少し詳しくご紹介します。レコーディングの仕事は常に自身の名前がレコードやCDにクレジットされる仕事なので、低予算がだから品質を下げて対応する、というような考えが入り込む隙間はありません。ギャラが安い仕事、条件が悪い仕事で頑張るのは一見、非合理ではあるのですが、得られるギャラ以上のアウトプットを心がけたり、現場で積極的にアイデアを出していくことで、リピートの仕事を含め、中/長期的には多くの結果を得ることができました。販売された音源が元で新しい仕事のオファーが来るという流れは、まさにコンテンツマーケティングそのものです。クリエイティブ系の仕事は自分の能力を超えた仕事を営業テクニックを駆使して受注してもトラブルになるのは目に見ていますので、とりあえず目先の売り上げの数字に走るとロクなことがありません。音楽業界はけっこういい加減なところもあったりするのですが、それなりに仕事を続けていくには、地道な商売の姿勢が求められる一面もあり、この経験が会社の経営を継続する上ではかなり役に立っています。

 さてここで紹介した話は、そのものズバリとはいきませんが、下図のように、「デライト体験と取引満足の関係」の図で表わされている話と関連するものが多いと思いませんか?


深い理解に基づく提案や情報の提供、丁寧な対応、優れた効果を発揮する製品の提供といったデライト体験と取引満足には一定の相関関係がある

デライト体験と取引満足の関係(デライト体験と取引満足の関係 出典:実践 BtoBマーケティング:法人営業 成功の条件:余田 拓郎/首藤明敏、東洋経済新報社、P.75)

 なお、個人事業や立ち上がって間もないベンチャーなどは事業の目的もハッキリしているため、BtoBマーケティング分野の基本姿勢については、大手企業が個人企業やベンチャーから学ぶべき点は多いではないでしょうか。

"走りながら考える企業Webサイト"の新しい運用の姿

 CMS(コンテンツ・マネジメント・システム)が登場したことで、それまでHTMLの知識を持たないと更新が難しかった企業サイトのコンテンツの手直しが、簡単に行えるようになりました(実際にはそんなに簡単ではないのですが)。この流れで一時期、Webサイト運用の仕事は減少しました。しかし、最近は、コンテンツマーケティング、インバウンドマーケティングへの注目度の高まりから、マーケティングマインドを持った制作会社には、制作の他に運用の依頼も増えつつあります。

 この動きの背景には、社内で内製してコストを削減したとしても、ビジネスの結果が出なければ、(コスト削減にはどんな)意味があるのか? という疑問があります。これまでBtoB企業は、ホームページの運用/更新を、どちらかというと後ろ向きな感じで捉えており、できるだけ手早く、安くやりたいと考えていましたようです。それが最近では変わってきました。ホームページの運用/更新は、ビジネスの結果を生み出すための前向きな攻めの仕事の1つに様変わりしてきたのです。やることはいくらでもあります。SEOの結果を睨みつつワードのバランスを考える、ブログを執筆する、マーケティングオートメーションツールを導入して、ユーザーの動きをトラッキングするなどなど......。CMSで手軽に更新できるとは言いつつも、結局、管理画面を相手にあれやこれや作業をするのはわりと面倒です。

 そんな中で、個人的には、HubSpotの導入と運用経験が、自分の中でのCMSに関する概念の変革につながりました。わたしが使っているのは一世代古いシステムなのですが、「ページマネージャー」という機能を使って管理するページは、Webブラウザからページにアクセスして管理画面に接続しなくても、直接、ページの編集/更新が可能で、この機能は導入先の企業が大変気に入っていました。

 「CTA」と呼ばれるツールでは、Webサイトの中で利用されているボタンを登録しておくことで、その表示回数とクリック率が一覧で確認できます。運用結果の数字を眺めながら、新たな仮説を立て、その場でボタンのデザインや内容を瞬時に変更できます。PDCAサイクルを回していくうえで非常に有効な機能だと思いました。ランディングページやHTMLメールのデザインなどもリアルタイムでの完全プレビューが可能なため、クライアントとの打合せは、ホームページの更新というより、マーケティングの具体的な施策を最適化する会議に進化を遂げました。

 このように、わたしにとってHubSpotは、今後増えるであろう"走りながら考える企業Webサイト"の新しい運用の姿を予見させてくれるもので、マーケティングオートメーションツール初体験としては、かなり衝撃的なものでした。

 マーケティングオートメーションツールの単体導入や、SFAと連携しつつ業務フローとユーザシナリオをホームページと連動した形で運用していく取り組みは、日本においてはこれから普及していく流れだと思います。自分たちが手間暇かけて制作したコンテンツがお客さまとの関係を生み出していくのが見えるだけに、マーケティングオートメーションツールと相性のよい制作会社ほど元気です。

 ELOQUAやMarketoなど、HubSpot以外にもさまざまなマーケティングオートメーションツールが日本に上陸しつつあり、また、6月10日にはSalesforce ExactTargetの日本ローンチセッションが開催されました。2014年は、マーケティングオートメーションの年と言えるかもしれません。

セールスフォースのExactTarget Marketing Cloudが日本語対応し、販売が開始されました