コラム:私がマーケティングライターになった理由

 はじめまして、ライターの岩崎史絵と申します。
 もともとは、エンタープライズ向けITのソリューションや製品の記事を書くライターでしたが、最近は「ITmediaマーケティング」「MarkeZine」などで、マーケティングをテーマにした記事を書く機会が増えてきました。そんなご縁で、今回こちらのマーケティングブログにも、記事を書かせていただくことになりました。改めて、よろしくお願いいたします。

マーケティングに興味を持つきっかけは、CRMやSFAの登場だった

 ライターには、それぞれ専門分野があります。映画ライターといえば、新作映画や、場合によっては旧い名画などもたくさん観て、映画評やコラムを書く人のこと。音楽ライター、グルメライター、女性に人気のファッションライターや美容ライターも、それぞれ「音楽」「グルメ」「ファッション」「美容」といった専門分野を持っています。

 私の場合、前述したとおり、エンタープライズ向けITをテーマにしていました。「エンタープライズITって何?」という方が多いと思うので、もう少し具体的にいうと、「企業で利用するシステム」のことです。経理部門が使う会計システムや、人事・社員が利用する勤怠管理システム、工場の生産計画を管理・立案する生産管理システムなどが挙げられます。特殊な分野なので、少々とっつきにくいと思いますが、経営者にとって、これらのシステムを有効活用することは、効率的で収益性の高い体制作りにつながります。たとえば生産管理システムを活用し、売れ行きや在庫を考慮しながら工場の生産稼働を適正化することで、無駄なく商品を生産し、在庫ゼロや供給過多を減らすことができます。主な読者は、経営者や経営企画層、CIO、システムエンジニアの方々でした。

 そんな中でも、「顧客情報を一元化して管理しよう」というCRM(Customer Relationship Management)や、「営業活動を管理・共有しよう」というSFA(Sales Force Automation)というシステムは、比較的分かりやすく、取材すると「なるほど!」と思うことがたくさんありました。その最大の納得ポイントが、「見える化」です。昔、まだコンピュータが高価で、1人1台でなかったころは、営業報告書もすべて紙。誰がいつどこへ行き、どんな話をしたかを把握できない上、顧客情報も共有できていないので、営業活動はすべて個人のブラックボックスという状態でした。最近でも、名刺管理クラウドサービスの会社が、「自分の部下が、実は営業アプローチ中の企業のお偉いさんと知り合いで、名刺交換もしていた」というオチのCMを流していますが、CRMやSFAが登場したころは、それ以上に、個人が持っている顧客情報や業務プロセスが見えない時代だったと思います。システムを導入することで、見えない情報を見える化し、しかもそれを共有することで、組織として効率的な営業活動ができるようにしたわけです。

マーケティングの歴史は「見える化」の歴史

 こうして見ると、マーケティングとは、見えないものをいかに「見える化」するかがポイントになると思います。もちろん一言で「マーケティング」といってもさまざまなので、ここでは大きく、「商品やサービスを買ってもらう(購買)」「新商品やサービスを認知してもらう(認知)」の2つに限定しましょう。

・その商品が欲しい人は、誰なのか
・その商品と、よく似た品物を購入している人は、誰なのか
・どこに行けば、潜在的な顧客と会えるのか
・その商品が欲しい人は、どんなテレビや雑誌やサイトを見ているのか
・どのように訴求すれば、購入してくれるのか
......

特に不特定多数の人々を対象とする消費財(BtoC)を扱っている場合、「誰」が「何を」「なぜ」欲しているのかという、潜在顧客の見えざるニーズを、完全に見える化することは難しいでしょう。

 ちなみに、その潜在顧客を見える化したのが、大塚家具のビジネスモデルだと思います。高級家具をリーズナブルに購入できる流通網を敷き、店舗を訪問した顧客から個人データを取り、予算感や欲しい家具の種類、購入理由などをヒアリングしながら、最適な商品を勧めます。潜在顧客を見える化するという点ではとてもよく考えられた仕組みですが、惜しむらくは、いまの時代に合わないということ。経営権をめぐる"親子ゲンカ"報道時にも多くの人が指摘しましたが、大塚商会のビジネスモデルに敬意を表する反面、「もうそんな(接客をする)時代じゃない」という声が多かったのも事実です。

マーケティング分野でIT化が進んだ理由

 ではどんな時代なのかといえば、「単なるモノの売買だけでは、顧客の顔が見えない時代」です。サザエさんの時代のように、個々の家庭に御用聞きがやってくることはありません。新しい製品が出ても、数カ月もすれば、似たような商品が別の会社からより低価格で発売される時代です。大衆よりも個人が尊重され、マスマーケティングの効果や効率性が疑問視されるようになりました。今までと同じことをやっていては、個々の顧客にたどり着けません。

 そこを解決するために、いまこそ有効活用したいのがITです。かつてマーケティング支援といえば、「営業支援」や「顧客管理」でしたが、いまやその範疇を超え、さらに大きな「マーケティング」という分野で、広告効果の最大化から、有効なキャンペーンの企画・実行、顧客データの分析やターゲットの見える化まで、さまざまなニーズに応える一大テクノロジーとなりました。

 本コラムでは、そうしたマーケティング活動を支えるさまざまなテクノロジーのニュースを紹介しながら、マーケティングについて考えていきたいと思います。